さえたん日記

アクチュアリーを目指す方々にお役立ちな情報を載せていきます!

年金数理の裏側にあるもの

このブログは学生の方に見て頂いていることが多いようなので、ぜひ業界研究に役立てて頂きたいと思い、2年半の実務経験を通じて思うことを綴ってみます^^

 

 例えば、従業員が定年退職を迎えるたびに一人あたり2,000~3,000万円もの大金を一時に準備するのは会社サイドとしても厳しいですよね…汗

そこで入社から定年退職までの約40年間にわたって掛金をコツコツ積み立てて準備する仕組みを構築するとともに、さらに掛金や積み立てられた年金資産に対して損金算入という税制優遇を行うことにより、会社サイドからみても企業年金制度を実施するメリットを設けました。

 

 年金数理の受験生の皆様が一生懸命勉強しておられるのは、この年金財政をどのように運営していくのか? つまり毎年度どれくらいの年金資産があって、責任準備金があって、今後も制度を半永久的に継続していくにはどれくらいの掛金を積み立てる必要があるのか? そして、昨年度の数値と比較して、それぞれどんな要因で増減しているのか?を、正確な数字を通じてチェック&把握するために登場するのが、脱退差・利差・昇給差といった利源分析になります。さしずめ年金財政の定期健康診断の検査項目のようなものでしょうか。

 細かい基礎率の変動が数理債務の額などに大きく影響することも多々あり、実務未経験の方からすると「たかが0.5%」と思われるかもしれない変更が、億単位・百億単位の違いを生むこともございます。

 

 企業年金制度は1962年に日本初の適格退職年金が導入されてから60年もの間、適格退職年金・厚生年金基金の発展と衰退、DBとDCの導入、そしてリスク分担型企業年金の誕生と、時代の流れとともにその在り方を変えてきました。

 この半世紀を振り返ってみても、石油ショック・バブル発生と崩壊、湾岸戦争アジア通貨危機リーマンショック東日本大震災、新型コロナウィルスの蔓延、ウクライナ侵攻といった経済情勢の変動があり、そのスパンは徐々に短くなっております。

 年金数理に登場する「年金資産」は、何万人もの従業員様の老後の生活資金となる大事なお金です。年金数理で皆様が苦戦しながら勉強する内容、年金財政の運営状況を正確な数値を通じて把握し、運営状況が悪化した場合にはお客様に寄り添って積立計画を一緒に見直すことは、新入社員が定年を迎える40年後まで、それまでに起こりうる経済情勢の変動から、この大事なお金を守るために不可欠な業務であり、ひいては老後の資金インフラを守ることに他なりません。

 企業年金は今後数十年間にわたってどのような様相を呈するのでしょうか。DBやDCではない別のカタチになっているのかもしれません。

 及びもつかぬ40年後までお客様の大事な老後資金を守るため、DBやDCの先にあるものに対しても、年金アクチュアリーは柔軟に対応していくのだと思います。

 

 未曾有の大恐慌が発生して企業の倒産が相次いだとしても、年金資産が外部積立によって守られたことによって従業員の退職金は守られる。ここに企業年金の存在意義があるのだとも思います。

 退職給付制度の変更は、重要な人事制度の変更であるため、経営トップマターとなります。年金アクチュアリーのお客さまは、その会社を50年後100年後にわたって存続させる責務を負った経営層になります。こういった方々とも議論を交わすには、目線のレイヤーを同じ高さまで合わせる必要がございます。そして、年金アクチュアリーが提案した制度設計はその会社に数十年以上の長きにわたって残り続け、何万人もの従業員様の老後生活の資金インフラになっていくのです。

 

どうでしょう。非常に奥が深い仕事と思えましたでしょうか?

 

 年金アクチュアリーを目指す学生の方は、そういった方々に対して、自分は一体何を話せるようになるべきかというのを今のうちからお考えになられるとよろしいかもしれませんね^^