さえたん日記

アクチュアリーを目指す方々にお役立ちな情報を載せていきます!

年金アクチュアリーのキャリアの幅について

社内外で出会ってきた年金アクチュアリーの業務内容のご紹介、キャリアの幅、年金業界のホットトピック等をフラットに書いてみようと思います。

面接の話のネタになりそうなことも記載していますので、就活生の皆様も業界研究や将来のキャリアイメージ構築にご活用いただければ幸いです^^

 

■勤務先

信託会社、生保会社、損保会社、監査、コンサル(制度コンサルティング、人事コンサルティング)、証券会社、官公庁(厚生労働省金融庁国民年金基金連合会、企業年金連合会等)、GPIF、信託協会、出向関連会社(システム子会社等)、大学など研究機関(出向)

 

今までにお目にかかったことのある方々の勤務先を列挙しております。

 

■部署・業務 

 

上に挙げた中では、信託銀行では「監査」以外ならば、全ての業務が可能だったりします。

信託銀行の魅力は幅広い業務が可能な所でもあり、未経験分野への転職は往々にして年収などの待遇が下がってしまうのですが、同じ会社での部署異動であれば年収や職位、人脈はそのままに、興味のある業務にチャレンジできるのは大きなメリットだと考えております。

 

■業務内容

  • DB数理計算(年金信託部、団体保険)

年金アクチュアリー候補生が新人配属されるのは、ほぼ100%DB数理計算の部署です。

一次試験の年金数理にあるような決算や財政計算、PBO計算などを行います。保険会社での主計部署のようなイメージでしょうか。

色々な会社の退職給付制度を数理部署で触れておくと、お客さまに「他社ではこんな制度もありますよ」といった話の幅が広がりますし、数理部署でしか培えない基礎は沢山あるので、とても大事な業務ですね。

 

こちらで数理業務について触れています↓

bluetan0210.hatenablog.com

 

年金コンサルティングを志望される方は、お客様とは法令知識に基づいて制度設計の検討を重ねますので、二次試験にあるような年金法令の知識習得や年金制度そのものへの理解を深めておくことを強くオススメ致します。

 

 優秀なコンサルティングアクチュアリーは、えてして年金制度への深い造詣をお持ちで、数理的素養、コミュニケーション能力、全て備えていらっしゃいます。(能力値のレーダーチャートが満遍なく高いイメージでしょうか)

 退職給付制度は人事制度の枠組みの中にあるので、お客様の多くは人事部のご担当者様になります。退職給付会計の話になると経理部のご担当者様がご同席することもあります。

 人的資本経営、Financial Well-being、人生100年時代、定年延長がホットトピックですが、人事コンサルティングに強みのある信託銀行もありますし、人事コンサルティングを行う年金アクチュアリーもいらっしゃいます。

 

制度コンサルティングについてはこちらの記事で触れています↓

bluetan0210.hatenablog.com

 

  • データサイエンス

 現場では、人手不足を補うための業務効率化の一環として、DX、システム化推進、データサイエンスへの関心は非常に高いです。特に数理部署での年金数理計算・報告レポート作成はシステムやツールが用いられているので、これらとの親和性が高いのかもしれません。

 旬の人気分野だけに、正会員になられた後、年金数理人になられた後のキャリアとして選ばれる方が多いです。業務公募制度を利用して異動されるアクチュアリー出身者が多い印象があります。

 

 信託銀行にも実はリスク管理部署というものがあり、銀行のERMを行っています。こちらでも年金アクチュアリー出身者が多く活躍されています。数学科出身だと喜ばれたという話もあります。

 Twitterを拝見する限りだと、やはり生損保のアクチュアリーの皆様の方がリスク管理へのご関心が強い印象がございます。

 数理部署やコンサルティング部署ですと、リスク管理よりもむしろデータサイエンスや人的資本経営、令和6年度公的年金財政検証の方が関心が強く、信託会社ではリスクを直接的には負わないビジネスモデルが意識・考え方に影響してくるのかもしれません。(幹事先・運管先の倒産による収益減少など間接的なリスクはあるのかもしれません)

 

 「CERAを取得しても、社内での資格の知名度が非常に低いことや、お給料アップ等、目に見える形での待遇向上がないので、面白いけど、正直モチベが湧きにくい」「英語は苦手だから海外に出る予定はない」という先輩のご意見もあったり、リスク管理部署に異動する際にCERA資格が必須というわけではなく研究会員や準会員の方も異動された例もあり、もちろん会社による差異もあるのでしょうが、異動の希望が比較的通りやすいのかもしれません。

 

アクチュアリー会HPにて、信託銀行でリスク管理に携わっていらっしゃる方の記事がありましたのでご紹介します↓

https://www.actuaries.jp/actuary/message08.html

 

  • 年金営業

 数理部署・年金コンサルティング部署のアクチュアリーが最もお世話になるのが年金営業さんです。お客様との窓口は年金営業さんなので、往訪アポをセットしてくださったり、往訪には必ず年金営業さんが同行しますし、やはり対客経験ではフロントである年金営業さんが圧倒的なので、連係プレーで対客しています。

 研究会員・準会員持ちの年金営業さんは実は結構いらっしゃり、アクチュアリー試験はもう受験したくないけど対客業務はやりたいという方が多いです。

試験に合格するとその難しさを重々ご存じなので、真っ先に「おめでとう!」とお祝いしてくださりますし、試験の合格状況は関心が強いのでリアルタイムに把握していらっしゃいます。人望のあるアクチュアリーの準会員が晴れて正会員になると、「お祝いしますよ!」と祝賀会の飲み会をセットしてくださったりします。

正会員の年金営業部長もいらっしゃいます。

 年金営業さんはお客様との宴席・接待ゴルフも行いますし(年金アクチュアリーではそういった場は基本ございません)、年金運用提案、DC提案、制度設計の提案など年金業務を幅広にこなされるので、年金事業の要は年金営業なので営業成績・ノルマなどはあるものの、仕事は楽しそうな印象があります。

 私も年金営業さんとは接点が多く、今の部署の同僚は全員が年金営業出身者なので思うのですが、やはり明るくてコミュニケーションに長けた陽気な方々がとても多いです。会話のテンポが早く、話していて楽しいですね!

「僕、女性のアクチュアリーは初めてお会いしましたよ!」と見ず知らずの年金営業さんが、私の顔と名前を覚えていらっしゃり話しかけてくださったりします。

 

  • 年金運用(年金ALM)

資産サイドの提案を行うことも可能だったりします。こちらは後述致します。

期待リターン引上げで旬なテーマですね。

 

  • 事業企画

年金営業部、DC部署、年金アクチュアリーの多くが属するDB部署の全体を統括して、年金事業全体を俯瞰した事業計画策定、企画立案、事業のPDCAサイクルを回す仕事です。年金ビジネスの屋台骨は年金運用(資産サイド)なので、弊社では年金営業部出身者、年金運用部出身者が多いです。

 

  • 大学などの研究機関(出向)、官公庁

社内の業務公募制度を使って大学の研究畑に戻られる方や、信託銀行から官公庁に出向される方もいらっしゃいます。

 

■得意な人が少ないもの

  • 英語(特にスピーキング)
  • 年金運用など資産サイドのお話

 

「苦手意識がある」「全く分からない」という声が多いもの達です。(裏返せば、得意になると強みに出来るもの達ともいえます)

 

 英語(特にスピーキング)を苦手とする方は本当に多く、私の周囲ではTOEIC800点以上が数人しかいらっしゃらないという噂もございます…。

外資系企業のお客様だと英語でプレゼンすることもあるので、スピーキングが出来ると重宝されます。

 また、年金アクチュアリーは負債サイドの話を好まれますが、年金運用などの資産サイドのお話を得意とされる方はあまりいらっしゃらないです。

アクチュアリー知名度がほぼないらしい年金運用関連への異動事例は聞いたことがないので、年金ALMの経験がある方くらいでしょうか。

 資産サイド・負債サイドはかなり観点が異なるので、両方の観点を持ち合わせていれば提案や着想の幅も広がりますし、応用が利くのではないかなと考えております。

年金運用の話になると前のめりになるお客様がいらしたりと、お客様の関心が相応に強いので、年金営業さんは年金運用提案を行う機会の方が多いですし、お客様のニーズにお応えするためにも、いずれ遠くない将来、年金数理人がDB決算報告のみならず年金運用提案も行えるよう求められるのではないかとも個人的に想像しております。(現に年金ALMは年金アクチュアリーの分野ですし、運用提案が出来ると転職の幅も広がりそうです)

 年金営業さんや年金運用部のPM(ポートフォリオマネジャー)といった収益をアグレッシブに狙いにいく、いわば「戦闘民族」ではないため、お金稼ぎの感覚などはこの方々ほど強くない印象があります。

 

■年金業界のホットトピック、関心事

  • 令和6年度公的年金財政検証
  • DC法改正
  • 資産運用立国、期待リターン引上げ、年金運用
  • インフレに伴う給付の実質価値の低下
  • 人的資本経営、FWB
  • 定年延長、人生100年時代
  • データサイエンス(業務効率化、システム化推進)

就活生の皆様は逆質問をお考えになる際にご活用ください。

 

■性格(キャラクター)

これは個人差が大きいところでもあるので一概には申し上げられない部分もありますが、

 年次が上がる程、思考の癖や主張がはっきりされていて、議論も白熱しやすい傾向があります。業務以外だと、飄々として掴みどころがないあっさりした性格の方が多いような…お話好きなお方は社内外問わず一定割合でいらっしゃいます。

 一方で、若手は穏やかで人当たりが良く、やや内向的で保守的な優等生というイメージです。他部署の総合職と比較すると、意識や関心のベクトルが内向きな傾向は少なからずあると思います。

 年次問わず、能力的に何か一つに突出しているというよりは、オールマイティなタイプが多いように思います。

 

 逆に、珍しいタイプを挙げると、内輪のコミュニティから飛び出して、外部との接点をどんどん持ちに行くような好奇心旺盛で行動力溢れるタイプというのは珍しいです。

 他には、尖っていらっしゃるタイプも珍しいです。

穏やかな方が多いイメージがおありかもしれませんが、私が個人的に尊敬する年金アクチュアリーの先輩方は、例外なく、負けん気が大変お強い方々です。

その個性や負けん気が高い向上心やプロ意識に繋がっていらっしゃるのだと拝察します。

 

■ご趣味

私の周囲では、野球ファンが圧倒的に多いです!

巨人と阪神タイガースが人気を二分しており、次いでホークス、広島カープ、西武という順番でしょうか。それ故か、業務でも「三遊間」「大谷君」などの野球用語が手引書や社内メールにもよく登場します。

他に聞き及ぶ範囲では、筋トレ、サッカー、マラソン、車・バイク、旅行、お笑い鑑賞、地酒巡り、建設現場巡り、ツール開発…etcです。