ご無沙汰しております。
DB数理計算の実務や年金コンサルティングの制度設計にあたり、法令の知識も必要不可欠なスキルであることを記事にしてみようと思います。
さて、以前のブログ記事https://bluetan0210.hatenablog.com/entry/2023/02/11/225528
でこのような文章を書きました。こちらのモデルになったとある先輩について、ピックアップしようと思います。
個人的に、当社の中で「専門家」という言葉に最も相応しい年金アクチュアリーとして尊敬する方です。
~(抜粋)~~
部署の先輩方を拝見していて感じるのは、年金アクチュアリーが「専門家としての合理的な判断」を行うための土台は、関連法令の知識だということです。
お客様や営業さんからの照会対応にあたり、年金二次で問われる知識はもちろんのこと、人事・労務、税制の知識、その他諸々の知識が必要になってきます。
法令やDB規約、DC規約、退職金規程を読み解く読解力をベースに、お客様・営業さん・社内の関連部署、地方厚生局等の全てのステークホルダーがご納得いただけるようなロジックを組み立てていく力、といったところでしょうか。
公的機関との折衝業務はかなり難度が高いので、こういった仕事を任されるのは年金アクチュアリーの中でもかなり頭の切れる方がご担当されるイメージです
(中略)
これは、得手不得手がはっきりしやすい能力のようで、頭が良すぎて却って標準レベルの相手に説明レベルをチューニングするのが難しい…といった方もいれば、頭が抜群に良く、その体系化された膨大な知識をどんな相手に対しても教えるのが抜群に得意な方もいらっしゃいます
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年金アクチュアリーがいる世界は、極めて白黒がはっきりした世界だと感じます。
例えば、DB数理計算を行う部署では、予定利率・予定脱退率といった基礎率の定め方、責任準備金の算定方法、最低積立基準額の算定方法、標準掛金・特別掛金・特例掛金の算定方法など、あらゆることが法令で明確に定められ、そのルールに則って、財政決算・財政計算・PBO計算などの算定業務を行います。それは、お客さまにご提供する数値は会社決算に用いられるため、そこにアバウトさ・恣意性があってはならないためです。
年金コンサルティングでも同じことで、制度設計・提案を行うにあたり、その制度設計が可能か不可能かどうかグレーな照会に対して、法令に基づき専門家としての合理的な判断に基づき、そのグレーに白黒のジャッジを下すことも仕事の1つなのだと考えております。
退職給付制度には企業の数だけ数多の事例があり、その膨大な事例を体系化させ、企業年金制度だけではなく、税制・人事制度・労働基準法その周辺分野の知識の観点を踏まえて、合理的な判断を行います。
例えば、選択型DCの導入にあたり、○○企業年金基金では○○の設計で行政の認可が下りたことがあった。この事例を踏まえて、☆☆企業年金基金の選択型DCの導入認可を行政宛交渉しよう、のようなイメージでしょうか。
しかしながら、行政も1つの事例を認めるとなし崩し的に他の事例も認めなければならないため、認可には慎重な姿勢を取ることが多いです。
解釈の幅を活かして、お客様や営業さんが望む制度設計の認可をもぎ取りにいく折衝は、膨大な知識のみならず交渉の場における機転、頭の切れ、度胸が求められるとのことです。
このモデルになった先輩は、その頭の切れと体系化された膨大な知識を以てして、正会員の間でも「専門家」「ブレーン」として一目置かれており、「この制度設計は判断しかねるから○○に整理してもらおう」といったように「当社判断≒その先輩のご判断」といっても過言でないほど絶大な信頼を置かれています!(少なくともこの方が、切れ者揃いのベテラン正会員の舌戦で論破されてるのを見たことはないです)
DBやDCには厳格な法令規制があり、制度設計を行うにしても、数理的素養だけではなく、この法令に通じている必要があります。そして制度設計の可能性を広げる役割をこういった先輩方が担っておられることをお伝え出来たのであれば幸いです。